ミルクティーと火曜日の夜

一人暮らしの夜を過ごすための日記。読書とか食べ物とか

ムンク展

こんばんは。ふとんの中の綿です。

見事に、まったく見事に一週間しか続きませんでした。

いや忙しかった……。まあこんな日にこんな時間まで起きてる時点でお察しなんですけどね。

今は冬休み3日目(体感的にはまだ2日目ですが)、やっとレポートが終わったところです。あとはもう一個レポートとプレゼン準備と余力があればテスト勉強……。冬休み、残るは3日。うーん。年なんか忘れてる暇ないなあ。

明日というか今日はもう実家に帰らなくてはいけないんですが、連日のレポート作成のおかげで部屋は荒れているし、荷造りなんて当然終わっていません。一人で実家に行くなら、それでもまあなんとかならないこともないんですが、今回は親戚が迎えに来るのでそうも言っていられず。絶対部屋見たがるぞあの人たち。あー面倒だな。

 

さて、そんな愚痴はどうでもいいんです。

行ってきました。

ムンク展。

 

一言で言うならば、愛と死 です。

 

本当に無学で、「ムンク?叫びのひとでしょ。抽象的であんまりよく分からないなあ。」というイメージしか持っていなかったのですが、今回それががらりと変わりました。

 今回東京都美術館で行われたムンク展では、大回顧展と銘打っているだけあって、ムンクの生涯とともに作品が展示されていました。

 ひとまず、忘れないうちに感想をここに書いておこうと思います。

 まずたくさんの自画像、そして子ども時代の記憶が影響している作品。あれらはみな「死」でした。結核で死んだ母、そして妹。その身近な死は彼の胸の中に強く印象に残ったのだと思います。それは悲しみだけにとどまらず、自身の不安、もしくは生命そのものへの哲学に結びつき、彼の作品に影響を与えているのではないでしょうか。

しかし、死んだ母や妹をモチーフにしたとされる絵からは、同時に愛を感じました。今にもつめたくなりそうな彼女の横顔に、描き手のあたたかなまなざしが降り注いでいるような気が、確かにしたのです。

 

 続いて、マドンナや吸血鬼のシリーズ。

一目見たとき、

あ、この人女に狂わされたんだな。

と思いました。嫉妬に身を焦がしたか、相手に踊らされたか、もしくは恋とは無縁だったせいで拗らせたか。たぶんどれかだなと思ったのです。

 この愛は先ほどのあたたかなものと違って、冷酷で情熱的、刹那的な愛でした。しかし、ここにも彼の死に対する不安感や生命の哲学が存在しています。一連の絵からは、愛に生かされながらも愛に殺されるような、そんな危うさを感じました。

 余談になりますが、昨年受けていた美術史とジェンダーについての講義でも、ムンクの『マドンナ』が出てきました。あまり覚えていませんが、たぶんこの女性観についてのものだと思います。まあ、さすがに女性の周りを精子で縁取る悪趣味さには気持ち悪いと思いましたね。たぶんこの女性に人格は無く、いろんな意味で生死を司るものの象徴だったのだと思います。それにしたってね……というか、それだからこそジェンダーの授業に出てきたんでしょうけど。

 あとはメランコリーなどの浜辺の背景で描かれた作品があって、あー青年だなあと思ったりね。ニーチェ肖像画見たときは、やっぱり!って感じでした。だって好きそうだもん。

 

 それから生命のフリーズの流れで叫びとか生命のダンスとか。星月夜もありました。唯一知っていた作品だと思っていた『叫び』も、ここまでの流れを踏まえて見てみると、まったく違った感想を持ちました。

 ここに来るまでは、「自然の叫びってなんだ……?」と思っていたんですが、彼には確かに聞こえたのだと思います。

 彼にとって、「自然」とは自己を投影するもの。燃え上がる空が喚起した自分の内なるものの叫び、それこそがきっと「自然の叫び」だったのです。

 

 あとは総じて、彼の色彩と構図は天才的だなあと感じました。『太陽』の色彩にも圧倒されましたが、他の作品の陰の色一つ取っても天才です。特に緑色の使い方が非常に上手で、凡人にはもう驚きしかありませんでした。

 構図も大胆でぱっと目を引く、それでいて近くで見てもバランスが崩れない。月の表現が美しかったです。海に反射する月はまるで落ちてきたかのような光の柱で表現されていて、いろいろな作品に出てくるのです。

 ムンクの故郷であるノルウェーには「月の道」という言葉があるそうです。もしかしたら、ノルウェーフィヨルドでは、月はあの絵のように見えるのかもしれません。メランコリーや孤独な二人に出てくる丸い浜辺の石もフィヨルド特有のもの。北欧、行ってみたいです。

 

 帰りにミュージアムショップで叔母のためのキーホルダーと自分用の『太陽』が印刷されたキャンバス地の缶バッジを買いました。星月夜と青いエプロンの少女のものとすごく悩みましたが、本物を見て一番印象に残ったものをと思い、太陽に。キャンバス地なので当たっても音が鳴らないし、鞄にでも付けようかな。

 

 あー夜が明ける。備忘録はこれくらいにして、そろそろ部屋を片付けて荷造りしないと。少し仮眠もとれたらいいな。おやすみなさい。